Friday, December 30, 2005

ナポレオン

 恋人が見た夢。おそらく、僕も見た夢の話。


 僕と恋人が友達の部屋に遊びに行く。その友達は、部屋に熊を飼っていて、頑丈な檻に入れられている。友達にはよくなついていて、友達が檻に手を伸ばすと、顔をこすりつけて甘えたり、ごろごろ言っている。
 
 このとうりよくなついているし、折から出ることはないから大丈夫だというので、恋人がおそるおそる熊を触る。しかし、熊の顔がだんだん険しくなってくる。危ないよ、と恋人がいう。友達は大丈夫、という。僕も大丈夫だよ、といいながら、本を読んで無関心でいる。

 熊はますます怒りだし、猫が塀の隙間をくぐり抜けるみたいに、間接を柔らかく動かして、にゅるりと抜け出す。逃げたよ!恋人は慌てる。友達は大丈夫だよ、という。僕はまだ本を読んでいる。恋人は怖くなって外に飛び出して、友達の部屋の扉を閉めて逃げる。

 外に出ていた恋人が、しばらくしてまた戻ってきて、そっと部屋を開けると、部屋は荒らされている。本や家具がぐちゃぐちゃになっている。僕も友達も熊も消えている。血は残っていない。どこにいったんだろう・・・・目が覚める。
 
 
 夢には夢の世界があるから、夢解釈はあんまり好きじゃないんだけど、熊とか檻とかを、欲望とか抑制とかと考えた。なんだかシンボル的でおもしろい。

 夢そのものより、それに何を感じるかが大切らしい。その夢を見てどう思ったか、って聞いたら、恋人はなんて答えたか忘れた。それがいちばん大切なことだと思うけど。いや、そもそもあのとき質問したっけ?全部言葉にしなくてもいいとも思う。

 夢の話を聞いた僕は、あのときから、恋人に対する感情を意識しつつある。これは・・・なんていうんだっけ。破壊的で押さえつけられないもの。愛すべき獣。恋人の夢で出てきた熊が、僕の夢の檻の中にいる。