回復まで
いま最悪なのは、もはやわたしには遠い未来に希望はなく、ときめく心でなにかを待ち望むことがないということ。過ぎ去った年に失ったのは、運命についての感覚、信念ともいうべきもの。私が恋するひとりの人間として、また多くの作品を著した作家として、差し出さねば鳴らないものには価値がある……つまり愛や作品に結晶した、あらゆる心の戦いや苦痛には価値があるという信念だ。
ありのままを言えば、わたしは失敗したのだと思う。状況がもっとよくなるだろうと期待にするには年を取りすぎている。わたしにはこんなにも不快なやりかたで<無力にされた>ので、確固とした意志で自己を律する以外に、自分を回復する道はありえない。しかもそれはほんとうの回復とはいえず、自殺だけはせずに生き続け、手にしている道具を使い、その技術は唯一わたしが自由に使えるから作家でいるということだけ。わたしはまだ昨年の出来事から<回復>できない。
自分自身について、また自分の能力についてもっていた意志、つまりわたしの内面軌道は壊れてしまった。
「回復まで」メイ・サートン より
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