Wednesday, March 01, 2006

「四月の痛み」「夢見つつ深く植えよ」(book)

 友達に薦められた「四月の痛み」(著:フランク・ターナー・ホロン 訳:金原瑞人)を読む。

 老人ホームに住む86才の元弁護士を主人公に、人生の終わりに死と老いと人生の成熟について書かれた作品とのこと。著者がこの作品を書いたときは、26才だったらしい。

 読んではみたが、あまり共感できなかった、というのが正直な感想。いい意味で期待はずれ。老人ホームの話というよりかは、主人公の自意識という感じが強い。ヤングアダルト小説のひとつだと思う。

 何が書かれていないかというこが、物語で大切だ。この話は老人ホームなのに、あまり介護のことは出てこない。家族に関しても出てこない。主人公は、「飯をどうかむかもわからなくなったような」「向こう側のテーブルに座って食事したくない」とだけ思う。
 夜中に部屋を抜け出したり、釣りをしたり、ラストシーンの球場のシーンも含めて、まったく「ライ麦畑」みたいだ。


 認知症の介護の仕事をしていて思うことは、
 介護者と被介護者との関わりに物語が欲しい、ということだ。神話と言い換えても言い。
 認識してもらえない、ということは、本当につらい。
 どんどん悪くなる。そして遅かれ早かれ死ぬ。

 けれども、実際の仕事を通して、肌のふれあいや、体温を感じて、声をかける。
 そのことで、ほんのちょっぴりだけでも、人間が生まれたときからずーっと続いているバトンのようなものを、老人に渡して、僕も渡してもらって、高いところへ行けたら良いな、と思う。

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