孤独は荒地ではない
コルシア・ディ・セルヴィ書店をめぐって、私たちは、ともするとそれを自分たちの求めている世界そのものであるかのように、あれこれと理想を思い描いた。そのことについては、書店をはじめたダヴィデも、彼をとりまいていた仲間たちも、ほぼおなじ書店が微妙に違っているのを、若い私たちは無視していて、いちずに前進しようとした。
その相違が、人間のだれもが究極においては生きなければならない孤独と隣り合わせで、人それぞれ自分自身の孤独を確立しないかぎり人生は始まらないということを、少なくとも私はながいこと理解できないでいた。
若い日に思い描いたコルシア・ディ・セルヴィ書店を徐々に失うことによって、私たちはすこしづつ、孤独が、かつて私たちを恐れさせたような荒地でないことを知ったように思う。
「コルシア書店の仲間たち」須賀敦子 より
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