Wednesday, August 02, 2006

東京国立博物館 「若冲と江戸絵画展」


東京国立博物館 「若冲と江戸絵画展」を見に行ってきた。

 日本画をちゃんと見るのははじめてだったんだけど、どれもすごかった。圧巻でした。こんな絵を描いた人がこの土地(江戸)にいて、それを支えた文化があるっておもしろい。

 まだ自分の中にある感覚、畳と米と味噌汁の感覚とか、受け継がれているなにかを感じた。西洋絵画を見たときとは違うなにか。
 過去から未来へ、いのちをつないで生きている自分の居場所を確認できる、大好きな故郷のような気がした。

 V室の江戸淋派のコーナーがすごくよかった。時間によって光の位置や強弱が微妙に変化する見せ方で、日本画にとって大切な「日常の光の変化」を表現しているらしい。色のコントラストが変わって行って、絵が浮かび上がっていくように見えたり、鳥が向こうに飛んで行くように見えた。

 黒い風景の中にいる兎が、日が当たるにつれて、だんだん見えてくる、もっと明るくなると、画面いっぱいに散らばっている雪が、きらきらと光をうけて反射して、雪が降っていることに気がつく。そうして絵と対峙していると、雪が降る時間をずっと経験したような気持ちになった。ああそうか。雪っていうのは、「降っているもの」でもなくて、「積もっているもの」でもなくて、「降り、積もる」その時間もすべて含めたものなのだ。

 恋人が、僕に「雪を見せたい」と言ったことを思い出した。「雪なんて見たことがある」と答えたのだか、僕は知らない。この絵の中のような世界も、恋人が見た風景も知らない。それは図鑑を見ただけで手に入るようなのではなくて、時間と空間を自分の体で感じなければ得られない、遠くて確かな風景だった。そのことに気がつくと、はじめて雪の風景が見たくなった。

 ・・・・・・雪は静かに降り、頭と肩にも降り積もる。頬をうつ雪が心地よい。風景はだんだん静かになっていって、どこまでも白く・・・白く・・・・・埋もれていく・・・・・


 博物館の外に出て、公園を抜けて電車に乗ると、看板や広告や人間の、都会の情報量の多さが、絵になれた眼にはしばらくくらくらした。

 お土産に、国立博物館限定のてぬぐいを買った。