Saturday, June 17, 2006

泥濘に住む男#1 (story)

 バスタブで泣いた。アルコールの力を借りたとはいえ、自分にこんな感情があるとはわからなかった。涙も声も心も、お湯と一緒に排水溝に吸い込まれていく。一人で泣けてよかったと思った。もし誰かといたら、ばらばらになってしまう。共犯者にはなれないよきっと。覗き込んでみた闇を、私は愛している。けれどもそれがどのくらいの深さかは今でもわからないままでいる。闇の深さも、私がそれをどのくらい感じているのかどうかも。

Monday, June 12, 2006

メモ

 【最近読んだ本】
「剣の門」桐生祐狩
「陽のかなしみ」石牟礼 道子
「ジョヴァンニの部屋」ジェームズ・ボールドウィン 
「総決算のとき」メイ・サートン 
「神童」「トトの世界」さそうあきら 
「ミヨリの森」「夢の空地」小田ひで次

 ある瞬間には平気だったことが急につらくなったり、ふとやってみたくなったり、偶然に人に出会ったり、一個前に読んだ本に出てきた言葉を次に見た映画で実感したりする。自分の心の動きを考えると一日一日はまったく同じに思えても、後から考えてると、とてもそんな気持ちはわからなくなってる。因果も、運勢も運命もあいかわらずよくわからん。書き留めなきゃな。いろいろ。

 最近は、ぼちぼち働きつつ(福祉系のバイト)をして、恋人と遊んだり、友達と飯喰ってる。本をたくさん読んでる。
 ちょっと前まで夜が眠れなかったけど、最近はとても眠い。

 恋人は生命パワーがありあまってるんじゃないか。そして俺はそれを受け取ってるから、恋人の部屋に行くとすごく眠くなってしまうのでは、とふと思い浮かんだ。 

Saturday, June 10, 2006

カードは手の中に

 カードを取り出す。裏返しにふせたカードを右まわりに回してシャッフルする。カードを集めて3組に分けて、それの順番を直感で入れ替える。上からカードをひく。それを順番に、十字を描く形で置いていく。ダイヤモンドクロススプレット。いちまい。にまい。さんまい。よんまい。【節制】【塔】【夜】と・・・

 出てきたカードに何らかの意図を感じずにはいられないのだが、カードを引くのはまったくの偶然である。その偶然に運勢が読み取られるという。仕組みや霊感についてはよくわからない。ただ、「こうあらねばならない」と常に考えている人生について、思惟を超えて超越した偶然という遊びがあるのだな、と思う。

 そして、そのカードを読み取るのは自分自身の思索。つまり、直感と経験と理性、とで読み取ろうとする。
 並べたカードで自分自身の運命を構築する。過去と現在と未来の物語を作る。面白い。

 カードをひくのも自分、並べるのも自分、それを読み取るのも自分なら、いまの自分が置かれている環境というものも、このカードを引いて並べたように、偶然と因果がある。

 けれども生きて行くのは自分自身で、カードとは違う。つまり、僕は計り知れない運命を作っていると同時に生きている。単純化できないことだってたくさんあってわかるわけがない。暗中模索。酔生夢死。そんなあたりまえのことに、出てきた運勢よりも驚く。

 カードをひく。カードを読む。
 先へすすめとカードは言う。僕はカードに言わせている。僕は自分をちょっと離れてみながら、自分を生きている。このバランスはむずかしい。読み取った運勢がなんであれ、生きて行かなければいけないのだ。だからこそ、カードをひく。それが偶然であることを確認して安心して、自分の物語を考えてみることを楽しむ。

 心配するな。先へ進め。カードはいい暗示だ。物語は語られるのを待っている。