Tuesday, February 21, 2006

人間らしさ

 昔読んだ話をふと思い出す。
 死にゆく友人のために書かれたエッセイの連作のひとつだったと思う。

 ・・・死にゆく目の前の人間に対して、私はたまに枕の位置をかえるくらいしかできない。そうすることで、自然に対してほんのちょっぴりだけ、死期を早めてもらうよう配慮してもらう・・・・

 という話だったと思う。いや、「ちょっぴりだけ、死期をのばそうと抵抗する」どっちだっけ?思い出せない。そもそもこの2つ(早めてもらうこと・抵抗すること)は、どっちも同じ気がする。死を与える自然に対して、人間の存在は圧倒的に無力であるという1つの点においては。

 けれども、この話で語られているような、枕の位置をちょっと変えるだけの無力であるささやかな動作が、胸を打つのはなぜだろう?
 合理性で割り切れない人間の行動に、本当の人間らしさが現れているように思う。


 人間がひとり、一生分で与えられる優しさは、かぎりなく大きいと思い込んでいる。それは地球を救うくらい大きく、なんでもできると思っている。けれど、正直ぴんとこない。ひょっとしたら、そんなに大きくなくてもいいかもしれない。いや、大きさは関係なくて、僕たちが日々行っている、ささやかな人間らしさの積み重ねが、気がつかないだけで、たとえようもないくらい深く、優しいものだと思う。


 僕は、他人に対して、優しくできなかったと後悔することばかりだ。どれだけの人を傷つけてたかと思うと、生きるのがしんどくなる。

 それなのに、いつもたくさんの人に認められたいと思う。黒い感情にいつも心は捕らわれる。欲望疑惑羨望嫉妬破壊自己憐憫。また、生きるのがしんどくなる。

 
 でも、もう大丈夫だ。本当に大切なものがなにかわかった。
 枕の位置を変えるだけのちっぽけな行為。人間には、合理的では割り切れない、優しくて美しいものが確かにある。
 見過ごさないで。割り切らないで。この小さい声を聞いて。そして、誰かにまた受け渡さなくては。

 心配しなくていい。優しさはたしかに降り積もる。僕たちは優しさの天才で、たいていそれに気がついていない。
 心配しなくていい。見えない優しさでこの世界は動いているから。生きるということは、この力を誰かに受け渡すこと。
 
 

 まだ見ぬ友達と、子どもだった僕へ。泥濘からの便りでした。

Friday, February 17, 2006

郵便局

 手紙を書こうと思う。
 
 誰かに出そうと思って、僕の鞄にはレターセットが常備されている。

 「ねえ、これ、だれに出すの?」「それが、わからないんだよ。」
 「・・・・でも、書こうと思う」

 僕が僕のちっぽけな子どもだったころの自分のために、いくつか書きためていた言葉と、
 年をとった自分のために、忘れないでいてほしいということを書き記した言葉はいくつかある。

 過去・未来宛。現在より。
 あなたへ。僕が生きて、いまやっと言葉にできることを、あなたに読んでほしいと思った。
 
 寂しい思いなんてしなくていいように。あなたは守られているんだということを証明できるように、
 手紙を書こうと思う。

 「ご無沙汰です。元気ですか?僕は元気でやっています。
  ここの暮らしにも、だいぶ慣れました・・・・・・・・・
  

寝違え

 腰から、左腕部左肩甲骨、頸骨あたりにかけて、急に痛くなってしまい、「はっ。もしや霊障!」と訝ったが、金縛りも、嫌な感じもしないし、どうやらただの寝違えだと。寝違えってこんな辛かったんだね・・・・10年ぶりくらい久しぶりな気がする。

 ネットで調べてみたら、「寝違えたときは、患部が炎症を起こしていることがあるので、マッサージすると症状が悪化することがあります」とあった。昨日、痛かったの我慢してマッサージしたから安心と思っていたのに、余計に痛くなったと思ったら・・・・おとなしく痛みに耐え、動ける範囲でゆっくり過ごそうと思う。
 
 痛いので、仕事を休むことにして、ごろごろ14時間くらい寝て、起きて本読んだり飯食ったり、バレンタインで会社の人にもらった義理チョコ食ったり。スコーン焼いたり。図書館で借りたトーベヤンソンの「島暮らしの記録」を読んだりした。たまにはこんなのも悪くないなと思う。焦らなくても。

Thursday, February 16, 2006

占うべきことがら

 知人に教えてもらった、渋谷の老舗の占い店に行き、占いしてもらいました。要電話予約。



「ジン太さーん。」

------おねがいします。緊張するなー

「こんにちは。何を見ましょうか?」

----えーと、転職を考えてて・・・仕事のことと。あと同性愛者なんすけど、2週間前に恋人と別れて、まあそんなこともあって、恋愛運も見ていただきたいな、と。 

 「そうだね、結婚運は最悪だしね・・・ゲイなのもわかるかも(笑)」

----それは男と女の結婚ってことですよね?

 「日本じゃ結婚できないからね(笑)イギリスとかならともかく(笑)」

----そうっすねー(笑)

 「仕事は、やりたいこと見つけるのがいいんだよね。人間関係がいやにやってやめちゃうから。でも独立自営心は強いし、小規模でなら独立してもやっていけるよ。いくつか才能もあるしね。職人運がある。文学的なものより、文学でないライターの仕事で才能があるよ。サラリーマンは絶対無理だろうね。心が強いように見えて、精神面が弱いから、ストレスがすぐ病気になる。鬱病とか。あと副業をもつといいよ。生活の安定がなくなると不安になるから、たとえばノルマがない公務員で、仕事以外の時間を副業に充てるってのも。理想は、公務員で副業で文筆業、あと経営だけでもいいから、接客業に関わるといいだろうね。」


----なるほど。(公務員で副業はありなの?)

 「性格は、我が強いけど、我を出さないタイプで、他人と壁を作る。

----うわー(当たってる?)

 「人にあてられやすい。悪い意味での影響を受けやすいから、親切心でおせっかい言う人は流してね。なになにしなくちゃいけない、とか、人にどう見られるかってこと、すごく気にしてる。でも心配しなくてもいいよ。」


 「休日になんの予定がなくても、友達に誘われても理由つけて断ったりするでしょ?」


---うーん・・・最近は友達と遊んでるけど、会社の飲み会とかは99%断ってるし。最近は一人でゆっくりしてるのがいいかな、って思ってます。 


 「一人の時間を大切にするから、いつも一緒だと相手が疎ましくなるだろうね。」

---それはあります。

 「同棲とか、疑似結婚とかするとだめになるよ。」

----(うわー。すげえな・・・)

 「お金には、一生困らない。年取ってからお金のこととか心配してるけど、そういうこと一番心配しなくてもい人だから。でも性格的に真面目で心配性だから、なかなか楽天的になれないだろうね。」

----まじっすか!ありがとうございます(なぜか感謝)

 「失敗するとしたら、恋人に貢ぐこと。これは絶対だめだよ。年上に甘えられる相があるし、君は恋愛表現が苦手だから、物をあげちゃうんだよね。でもそれを当たり前だと思って受け取られるから感謝されない。」

----うーん・・・・たしかに物あげちゃう気もする。

 「男同士っていっても、君は男になるんだよね、あ、性的役割じゃなくて、立場としてね(笑)男らしい相を持ってるし。相手に依存されやすいんだよ。年上に依存されると重いと思って心が離れていくんだよね」

----(うわー!!!)

 「君はファザコンなんだよ」

---ファザコン?

 「さっき、お母さんに電話してたけど(生まれた時間がわからなかったので、携帯に電話して聞ていた)君は自分でマザコンと思って、母親のことが好きだけどマザコンじゃない。お母さんは、すごく優しくていい人でしょう?身近な女性の存在、母親が重たいから女性に向かえないんだよ」

 「包容力がある人に惹かれるのは、父性的な愛情に飢えているからだよ。(父は)まじめで厳しい人だよ。」


 ・・・・ファザコンは意識したことがなかったから、正直びびりました。ゲイになったっていう因果論は、考え始めるとどうどうめぐりだから、自分であんまり分析しないけど、これは言えてるかもしれない。

 「カミングアウトもしてるでしょ?家族は理解してくれているね。」

---そうです!(カミングアウトしてるって言ってないのに、当てられた!)

 「恋愛は・・・君は相手には困らないだろうね。すぐできるよ。いままで交流なくて、全然知らない人が3ヶ月以内にできるよ。」

 と、親指を出しました。
 全然知らない人って、マイミクさんじゃないんすね。


 「長続きさせようと思わなければ、うまくいくよ。友達にお披露目とかしないで、楽しむことだけ考えれば。基本的にめんどくさがりだから、自分から他人に合わせようと思わないほうがいい。」

 ふむ・・・・

 

 とまあ、こんな感じであと健康運や旅行運、もうちょっと細かい転職とか恋愛のこと(時期とか)いくつか質問して、20分(多分もうちょっと長い。初回だからか?)5250円でした。でも、これだけたくさん占ってもらったら満足です。


 あんまりひどいこと言われなくてよかった。背中押してもらった感じでうれしかったです。オーラの泉に出るゲストの気持ちです・・・・

Thursday, February 09, 2006

カモメ

 ちょっと風邪をひいた。
 たいしたことはないんだけど、ちょっと体がだるいのと、のどが少し痛い。
 考えれば、いままでちょっとテンション高すぎた。のんびりしよう。

 ワニ君から教えてもらった野狐禅のアルバムを、繰り返し聞いている。繰り返し。何度も。


  「僕はもう疲れきってしまってね
   部屋のカーテンを 全部閉めきったんだよ
   僕はもう疲れきってしまってね
   ダンボール箱の中に 閉じこもったんだよ」

     野狐禅「カモメ」


 本を読んでいる。
 最近読んだ本。「人間の土地」サン・テグジュペリ 「東方綺談」マグリット・ユスナール 「幻談・観画談」幸田露伴 
 「詩としてのセックス」ジャネット・ウィンターソン
 
 僕は、幻想的な話にとても捕われてしまう。物語が、欲しい。詩が欲しい。
 言葉にできないこと、まだ見つけられないことがそこにあるような気がする。
 

   「青を塗って
    白を塗って
    一息ついてから
    最後に僕の気持ちを塗った
    空の絵を描いていたつもりが
    海みたいになってしまって
    ひらきなおって カモメを描いた」


 ゆっくりと、心の輪郭をなぞるように、音楽と言葉は流れ落ちて、僕は自分の孤独に触れる。
 縁取られたそれを、暖めようとして、目を閉じて息をする。

 嫌いじゃないな、この感じ。風邪ひきなのも。一人なのも。

Tuesday, February 07, 2006

ヤサシイワタシ

 愛した人に愛されたいと思っても、決して自分が望むように愛されることはないと気がついてしまったことと、
 世の中には、自分が望む形で愛してくれる人がいるんじゃないかと、思ってしまったこと、その二つの矛盾した発見が、僕を変えてしまった。

 そして私は、「かけがえの無い自分」ではなく、「他に代わりはいくらでもいる自分」であることを、はっきりと意識してしまったのです。悲しい喜びです。これが大人時代の始まりです。

 あと何年化したら、きっと僕も、子ども時代の思い出が、24才からの大人時代の思い出を、量で凌駕する日が来ます。
 単純計算でいうと、48才からです。 24<(xー24)思い出すことの大半が子ども時代ではなくて、大人の時代になる日がいつかは来ます。その日を待ちわびています。せめてその時までには、少しでも「かけがえのない私」になれるかどうか。少し考えます。
 

Monday, February 06, 2006

君の真未来に捧げる歌

 仕事を辞めさせてほしい。できれば3月10日くらい、無理でも17日までにはと上司に告げた。
 
 よりによって、この忙しいときに(いつも忙しいのだが)男の子は、1年やそこらで辞めたら物にならない、と言われた。そんな人は、また次もすぐ辞めるわよ。
 
 そうなんかなー 我慢して1年。物にならずに1年。半端で終わらせて1年。根の張らない石の上に1年。
 手足を無くしたダルマみたく、ここでゆっくり壊死していく気がするのは、間違ってるのか?
 
 ちゃんと仕事してお金もらわなくちゃ生活できないから、仕事はするよ。
 だめでも、やってくよ。もっと、働くよ。でもここでは無理。他で働くよ。


野狐禅 「自殺志願者が線路に飛び込むスピード」@iPodnano

 「せっかく空を自由に飛べるようにこんな立派な白い羽根がついてるのに
 こんなところに迷い込んできたら意味がないじゃないバカだねぇ」
 君はそう言うと 便所の小窓を開け
 ふわふわ白い羽根のついたタンポポの種子を そっと逃がしてあげるのだった
 ケツをかきながら 隣に突っ立っている 僕を見つめて
 「あんたも同じだよ」と 僕の睫毛についた目ヤニを指で弾いた

 ナメクジみたいに君に体を這う毎日

 自殺志願者が線路に飛び込むスピードで 僕は部屋を飛び出しました
 目に映るものすべてをぶっ壊してやりたかったけど
 そんな時でも 一番お気に入りのTシャツを着てきた自分がバカバカしくて…

 そのライブハウスではいつも70年代フォークが流れており
 僕は彼らのメッセージに応えるべく 全身を硬直させたんだ
 「マスター、家も電話もない人間にアルバイトをさせてくれるバカな会社がありましたよ」
 マスターはメガネを押し上げながら
 「バカはおめぇだろ」と笑うのでした
 こうして僕は 汗水流して働いてなんたらかんたらというヤツを経験したわけだけれど
 何故だろう 昇る朝日から眼をそらしてしまうのはいったい 何故だろう

 ゴキブリみたいに夜を這う毎日

 自殺志願者が線路に飛び込むスピードで 僕は自転車こいで濱野の家に行きました
 「このまま終わってたまるか」なんて言いながら
 ファミリーコンピューターの赤いコントローラーをパチパチやってる自分がバカバカしくて…

 自殺志願者が線路に飛び込むスピードで
 生きていこうと思うんです

Thursday, February 02, 2006

モモの歌

 なにかが足りないような気持ちは、これまでに何度も感じた。
 そのたびに、はっと胸をつかれて、失ったものを取り戻したいような気持ちになる。
 でもそんな気持ちはすぐに消える。

 記憶の奥の、美しくて深いところに沈める。
 今の気持ちにも、状況にも、ゆっくり馴染んでいく。

 なにかに夢中になる。
 別のことを考え始める。

 昨日は夢だったこと。いまはもう夢じゃなくなったこと。
 昨日は今日の夢を見て、今日は明日の夢を見ること。
 昨日は記憶になり、記憶は夢になり、明日になること。
 昨日が今日で、明日が昨日で・・・・未来が夢で、夢は過去の古い記憶の予感だ。

 記憶は継承する。記憶は創造する。
 夢は継承する。夢は創造する。

 「知らなかったー 時間がこんなに・・・・
  ・・・・・・・・・こんなに美しいなんて」